不動産

日経新聞が掲載した不動産に関する解決案

日経新聞に『捨てられる不動産 どう解決』と題して丸々1ページを使用して不動産に関わる特集が組まれていました。
今回は岩手県知事をされていた増田寛也さん、三菱地所の専務取締役の谷沢淳一さん、日本大学教授の中川雅之さんが回答されています。

Contents

増田寛也さんの解決法

  • 義務化し罰則を設ける
  • フランスのように資格者を通す仕組みにする
  • 登録免許税を下げる
  • 所有権と利用権を切り離す
  • 最終的にはデジタル台帳を整備する
傾向としては所有者に強引にでも登記をするように促すという考え方のようです。
義務化や罰則化というのはあまりにも極論で論外だと思います。日本の法律では所有権は登記をすることで取得するわけでは有りません。義務化させるとなると不動産登記法だけの改正だけでなく民法も改正が必要となる相当大掛かりな法律改正となると思います。ルールを根本的に改正しようという話は10年20年かけて解決する話ではないかと思います。対応を急がなければならないと話されているのにのんびりした対応を一番に考えていますね。
フランスのように資格者を通す仕組みを作るのは非常に難しいでしょうし、登録免許税を安くするというのはほとんど効果はないことでしょう。そもそも放置される不動産には価値がないことがほとんどで登録免許税もそれほど高額になるわけではないと思われるからです。
デジタル台帳というのもどのように構築していくのかイメージが湧きませんでした。もしデジタル台帳を作るのであれば登記簿もあまり意味がなくなるし、申請先も一元化してくれた方がいいと思いますが、そんなことが数年のうちにできるとは思えないです。
どれもかなりの時間を要するような意見で迅速な対応は不可能と言ってもいいと思います。こんな手がすぐに使えるのであれば別に所有者が不明の不動産が増えてもなんの問題もないとさえ思ってしまいます。
また、増田さんの解決案だと基本的には法整備をさらに強化するということなので不動産の取り扱いは複雑になっていき、ますます不動産の流動性が失われてしまうのではないかと思います。

谷沢淳一さんの解決法

  • 増えちゃったもんはしょうがないけどこれから増えないようにしよう
  • 仲介手数料の制限をなくせば仲介もやる気を出して販売するようになる
  • 役所が台帳などを個人情報の観点から閲覧させてくれない
  • コンパクトシティ化しよう。ノウハウは民間デベロッパーがいるから大丈夫
谷沢さんは埋もれた不動産が出てくるのは仲介手数料が安すぎるからとか民間デベロッパーのノウハウでコンパクトシティ化を実行しようとか、全て自分の働く会社に利益が出ることばかりを述べられています。仲介手数料が上がれば不動産の販売が進むと言うのはあまり関係がないでしょう。今後不動産価格が下がることを予想して手数料でしっかり稼ぐ道を作っておきたいだろうなと思いました。
役所の個人情報保護の観点は確かに面倒な問題ではあります。最近の個人情報がらみはとてもうるさ過ぎて役所自体も守り入ってしまうため、積極的には開示してくれないのが現状です。なんでもかんでも委任状を要求してきます。
コンパクトシティ化自体は同意なんですが、時間はかかるしデベロッパーの方が言うと自分のために言っている気がして急に説得力がなくなってしまいます。これからの人口減少に備えたデベロッパーの生き残りのための意見だと感じてしまいます。

中川雅之さんの解決法

  • 空き家問題が深刻化してるのに住宅着工件数多すぎ
  • コンパクトシティ化を進めよう。市町村対応遅すぎ。
  • 国や都道府県が人口推移をみて基準を作ってあげよう
  • とにかく自治体が人口減少に向き合えていない
  • とにかく人口減少を直視して対応しよう
中川さんは人口減少に問題があると指摘しています。コンパクトシティ化を進めていくべきという意見ですが僕もその通りだとは思います。市町村の対応が遅いのも事実でしょう。国や都道府県が働きかけることも非常に重要だと思います。捨てられる不動産の解決法として正しいのかどうかは疑問です。人口減少に対処する方法としては納得がいくのですが、それだけでは今の所有者不明の不動産問題は解決につながらないと思います。

まずはできることから始めたら良い

3名の方が言われることを迅速に実現できればある程度不動産にとって良い環境ができるとは思っていますが、時間がかかってしまうなぁと思います。僕はもっと身近なことから始めても良いんじゃないかと思います。
例えば除票がわずか5年しか管理されない問題市役所などの行政が差押えをしても競売にはなかなかかけないという問題があると思います。
書類の保存期間は戸籍については最近150年とずいぶん長くはなりましたが、住民票の除票についてはいまだに5年間と短いのは調査をかなり困難にしています。
また所有者が不明になるのを未然に防ぐことができるのは固定資産税を徴収している市が最も早く気づくことができるんじゃないのかと思います。差押えをしてもその後はしばらく放置してしまうから最終的な所有者がわからなくなってしまうのではないかと思います。人が足りないというのであれば増員をするか、司法書士などの資格者に委託してでも行っていくべきだと思います。本来は市で行うべきでしょうが、日本として大きな問題となっている以上は国や都道府県も協力して積極的に取引がされている場所に不動産を置いてやるのも行政としては大事なことではないでしょうか。
固定資産税の支払いをしているが登記上の名義変更を済ませていないことを知ることができるのも役所です。名義変更をしていない方に積極的に呼びかけて相続登記を推進することで少しでも所有者不明不動産を生まないことも重要だと思います。

まとめ

増田さんと谷沢さんの意見にはあまり賛同できませんでした。谷沢さんは立場上自分の利益になる解決法ばかり提案しているようにみえるのが非常に残念です。
特に増田さんの罰則案は論外だと思います。登記をしなくても所有権を取得できることとなっている以上は相当な法律改正が必要となると思います。
どちらも最善を語っているのではなく、立場ありきで語られている印象があまりにも強すぎます。
まずは今できることを最大限行うことを考えるべきだと思います。