今や日本の5人に1人がかかっているスギ花粉症は日本の「国民病」とまで言われています。
スギ花粉症の原因はもちろんスギ花粉です。日本にスギ花粉症が多いのは杉がたくさん植林されているからなのですが、日本には昔からたくさん杉があったというわけではありません。
国策として杉をたくさん植林した結果のことなのです。つまり、スギ花粉症は国が生み出した国民病でもあるとも言えると思います。
また、杉が現在も植林され続けるのはマイホーム神話とも深い関わりがあると思っています。
今回はスギ花粉症とマイホームの関係について少し書いてみたいと思います。
Contents
なぜ杉をたくさん植林が始まったのか
なぜ日本で杉がたくさん植えられたのかというと日本の資源不足という背景と杉の成長率の高さにあります。
戦後の日本はとにかく資源が不足しており、木材も例外ではありませんでした。戦後復興や都市開発には木材の急務だったわけですね。
成長速度が早くまっすぐに伸びる杉は、建築資材が急務だった日本と利害関係が一致した木であったわけです。その結果国を挙げて杉の植林を支えていたということなんですね。
現在でも杉の植林を減らしていない
ですが高度経済を終えバブルが崩壊した後も植林は進んでいます。現在もなお杉の植林は収まらず、年間1600万本近くも植林されているのです。
今でも植林が続けられる理由としては安価な木材としての人気が高く、需要があるという背景があるようです。
人口減少に差し掛かると言っているにも関わらずいまだに出生数とほぼ変わらない数のマイホームが建ち続けていることも杉の植林をやめない背景としてあると思っています。
また、林業をやられている方も回転率が高く、必ず売れる杉を植林したいということも言えると思います。
背景にあるマイホーム神話
以前にも書いたことがあるのですが、日本の建築着工件数は異常なほど高いです。
⇨『日本の異常な住宅事情』
着工件数が高い理由として考えられるのは昭和に植え付けられたマイホーム神話との関係です。
今でも日本の住宅市場のほとんどは新築物件が占めており、中古物件については人気があまり高くありません。圧倒的に新築物件が人気である結果、新しい家を建てるためには木材が必要となってしまうのです。
世界的に見てもこれほどまでに住宅市場が新築に偏っている国って本当に珍しいと思います。特に欧州の国では中古物件が主流で新築物件はあまり建てられていないようです。アメリカでも市場を支えているのは中古不動産です。
つまり、新しいもの好きで中古の不動産に価値がない日本独特の建築件数が杉の植林を支えているということになります。
政府の対応
政府は杉自体の植林を減らすという政策は打ち出されていません。基本的には杉の植林数を減らすわけではなく、花粉量だけを減らすことを考えているということです。
花粉症対策杉の植林を促進し、2017年までに1000万本を目指していましたが、2016年の数字を見る限りでは達成はしていないものと思われます。
ただ、政府目標にはかなり近い数字まで言っているのではないかと思うので徐々に花粉の量は減ってくるんじゃないかと思います。
花粉対策杉は本質的な解決策でない理由
そもそも杉を植林が急激に増加した背景には、戦後の建築資材不足だったはずなのに現在でも多量の杉が求められていることに問題があるのではないかと思います。
本来は過剰なほどに植えられている杉の数を減らす方向に話を考えていかなければならないのではないでしょうか。
日本のマイホームの建て替わり周期はわずか30年と先進国でも圧倒的に短いです。アメリカや欧州諸国では100年前後の建て替わりです。そう考えると日本の住宅は他国と比べるとハリボテのようなものだと思います。
日本はこの短すぎる周期が木材の需要を伸ばしているのです。
まずは不動産価値を見直して、中古不動産にもそれなりの価値を与えることが重要だと思います。
そのためには国策として行ってきた新築への住宅ローンや税制優遇などを見直すべきだと思います。
まとめ
少し極端な見方かもしれませんが、マイホームがスギ花粉を助長していることはある程度正しいのではないかと思います。
マイホーム神話が完全になくなってしまう必要はありませんが、現在のような新築不動産神話はもっと縮小すべきだと思います。
そのためにも30年周期でハリボテを建てて木材の使用量を増やすのではなく、100年住める家で耐久性の高い建築資材を利用するように変わっていってくれたらいいなと思います。