前回のブログで相続登記があまりにも放置が多いので、そろそろ国もやばいと思っていることを取り上げました。
ですが、なぜ相続登記が放置されるのかということはあまり知られていないのかもしれません。
今回は相続登記が放置されている現状がなぜ起こるのか、放置をすることの問題点を考えていきたいと思います。
Contents
相続登記がされずに放置される原因
なぜこれほどまでに相続登記は放置されてしまうのでしょうか。僕は少なくとも4つの理由があると考えています。
4つの原因とは以下のとおりです。
- 手続きがすごく面倒
- 不動産に価値がない
- 特段の期限、罰則がない
- 相続登記をしなくても困ることがない
1,手続きがすごく面倒
前回、不動産の相続登記の必要書類について書かせてもらいました。
書類の種類を見ていただくとわかりますが、すべてを揃えるのがかなり大変です。
特に戸籍を取得するという作業はかなり面倒くさい作業で、下手をすると1か月以上もかかることがあります。
昔の役場の書類は手書きで非常に読みづらいため解読も難しいです。
作成する書類は一言一句間違えてしまうと登記できないこともあるため、非常に神経を使うことになります。
不動産登記は自分たちで行える比較的安易な不動産登記の一つとは言われていますが、それでも初めて書類を作る人にとっては大変な作業です。
また、登記申請をする法務局は管轄が決まっていますので、近所の法務局に登記申請をするということもできません。
郵送での処理を行うことはできますが、不備が発見された場合には結局法務局に足を運ばなければならない可能性もあります。
2,不動産の価値がない
相続する不動産は価値が全くないということも珍しくありません。
特に地方はその傾向が強いせいか、相続登記の放置が大都市に比べて圧倒的に多いです。
価値がないもののために行うにはあまりにも面倒で、酷な作業が相続登記なのです。
どんなに価値のない不動産であっても司法書士に頼めば10万円程度は費用がかかります。
価値がない不動産のために費用を捻出するのもバカらしいため、相続登記をせずに放置してしまうのだと考えられます。
3,期限がない
不動産の相続登記は相続税の納付とは違って一切期限がありません。
つまりいつまで放置していても罰金などのペナルティが一切ないのです。
期間の制限がなければ、いつまでも放置してしまいがちです。
面倒なことは後回しってみんなに経験があることだと思います。
相続登記も例外ではなく、「また今度でいいか」と思って気が付けば5年、10年と放置してしまうのです。
人が亡くなると、期限が定めれている手続きはたくさんあります。期限の定めのない相続登記は必然的に優先順位が下がってしまうのです。
所有権は取得時効で取得されることはあっても、消滅時効がないため相続人は放置していたからといって所有権を失うことはありません。
相続人がいなければ国庫に帰属するという法律もあるのですが、相続人がいる以上はいつまでたっても国庫に帰属することはありません。
4,相続登記をしなくても直近困ることがない
相続登記は手間と費用が掛かります。
何度も書きますが長いときで1か月以上の月日をかけることも珍しくないのです。
そんな面倒な手続きであるにも関わらず、登記をしなくても処分を考えるまでは特段困ることがないのです。
手間がかかるだけなら放っておこうと考えるのが普通のことではないかと思います。
また、固定資産税についても登記を放置していても、お役所は亡くなったことも相続人も把握しています。
役所は死亡が確認できれば相続人に片っ端から連絡を入れて固定資産税を納めるよう催促してくるのです。
登記はあくまで名簿上の所有者であって実質の所有者ではないということもあります。
役所としては税金さえ収めてくれればいいので、相続登記とはあまり関係ありません。
相続登記をせずに放置することの問題点
このように、手間ばかりがかかるばかりで明らかにメリットが小さい相続登記ですが、実は相続登記をしないデメリットもかなり大きいのです。
次は放置をすることでどのような問題が起こりうるのかを見ていきたいと思います。
1,すぐに売ることができない
不動産の相続登記が行われていない場合、売りたいと思ってもすぐには売ることができません。
不動産を売買する場合、登記上の名義を非相続人から相続人へと書き換えておく必要があるのです。
亡くなっている方の名義のままでは買主に名義を譲り渡すことができないのです。
不動産屋さんによっては、相続登記をしたあとでないと買主さんを見つけれくれないこともあるようです。
2,相続登記の複雑化
相続の話し合いは親しい間柄で行うことが望ましいです。
長期間放置してしまうと話し合いができなくなる可能性があるのです。
不動産の相続登記を行わず長期間放置すれば、相続人も亡くなってしまうということがありえます。
そうなると、話し合いは相続人の相続人と行うことになります。
相続人の相続人となれば、一度顔を合わせた程度の赤の他人ということもありうるでしょう。
そういった遠縁の方とは直接話し合うことが難しいため弁護士を介すこととなって、無駄な費用がかかってしまうことも大いにありうるのです。
しかも戸籍謄本の数も莫大な数となってしまい、とても個人では手に負えないものとなってしまうこともあります。
相続人が10人以上となってくるととてもではないですが、集められないでしょう。 亡くなってすぐの場合だと近しい間柄の人間で解決できたことが、とてもややこしい相続登記に変化してしまうのです。
他人との話し合いになるなんてありえないと思っているかもしれないので、簡単な一例を紹介したいと思います。
- Aが死亡、この時点では相続人は息子B,Cの2人のみ。
- 相続登記をしないうちにCが死亡。Cには子がおらず妻Dのみが相続人だった。
- Dが死亡。Dには子もおらず、両親はなくなっていた。相続人は兄弟Eだった。
このような場合Cさんの相続権をDさんが相続し、相続したあとにDさんも亡くなっているためEさんが相続権を有します。
Eさんは結果、Aさんの相続権を数次相続してしまっているのです。
Bさんは本来Cさんと話し合いをすればよかったのに、長期間放置してしまったせいで、兄弟の奥さんの兄弟EさんとAさんの相続について話し合いをしなければならないのです。
3,不動産の流動性が失われる
相続登記において大きな問題となるのが、不動産の流動性の問題です。
相続登記しないで放置する人が増えれば先ほど説明したように相続人が複雑になってしまいます。
相続人が複雑になれば、さらに相続登記が行いづらくなりさらに放置してしまうという負の連鎖へと陥ってしまうのです。
負の連鎖に陥った土地は誰も処分ができない土地となってしまい、不毛の地へとなる可能性があるのです。
政府は流動性を問題視してやっと相続登記を促す動きを見せたのです。
終わりに
相続登記は手続きが非常に面倒で、簡単なことではありません。
ですが、放置は更に面倒な状態を生んでしまいます。
できる限り早めの処理を心がけてほしいと思います。
よくわからないと思えば専門家である司法書士に相談に乗ってもらいましょう。
やっぱりプロは早いですよ。